最終更新日:2024年5月30日
職場におけるパワハラが大きな問題となっていることを踏まえて、改正労働施策総合推進法(いわゆる「パワハラ防止法」)により、パワハラ対策が義務化されています。
パワハラを防止するために雇用管理上必要な措置等について確認してみましょう。
(1)パワハラの定義
パワハラ防止法では、パワハラについて次のように規定しています。
事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
この規定のポイントを抜き出すと、次の3要素を満たす言動がパワハラということになります。
①優越的な関係を背景とした言動であること
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであること
③労働者の就業環境が害されること
(2)パワハラの行為類型
具体的にどのような行為がパワハラに該当するかについて、優越的な関係を背景として行なわれたものであることを前提に、次の6類型が示されています。
①身体的な攻撃(暴行・傷害) |
②精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言) |
③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視) |
④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害) |
⑤過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと) |
⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること) |
このように、パワハラについて一定の目安は示されていますが、各事案の状況等により、パワハラに該当するか否かは個別に判断されます。
(3)事業主の義務
事業主に対しては、パワハラに関する労働者からの相談に応じ、社内体制の整備や雇用管理上の措置を講じることが義務づけられています。
事業主が講じるべき措置の内容は、「パワーハラスメント防止のための指針」(事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針)において定められています。
当然ながら、ビジネスの現場で生じるすべてのパワハラの類型を指針でカバーすることはできません。
指針で示されたパワハラとはいえないものの、実際にはパワハラに該当しかねない「グレーゾーン」も多々発生する可能性があります。
企業としては、指針を踏まえて、パワハラを防止するための就業規則、服務規律、ガイドラインの整備、社員教育・研修などに取り組む必要があります。
最後に、パワハラ防止に関連して、現在、労働施策総合推進法を改正し、カスハラ(カスタマーハラスメント=顧客からの暴言や理不尽を要求)から従業員を守る対策を企業に義務づける方向で検討が行なわれています。
従業員が安心して働ける環境を整備するためにも、法制化を待たずにカスハラ対策を講じるようにしたいところです。