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働く選択肢を増やす「労働者協同組合法」の施行から2年

2024年11月の総務豆知識

働く選択肢を増やす「労働者協同組合法」の施行から2年
最終更新日:2024年10月25日
「労働者協同組合法」は、2022年10月1日に施行されました。
これにより個人としては働き方の選択肢が一つ増え、会社としては新しい形態の組織(法人)と取引を行なうことになるかもしれません。
そこで、労働者協同組合の概要を確認してみましょう。

(1)労働者協同組合とは

労働者協同組合法1条では、法律の目的を次のように規定しています。
この法律は、各人が生活との調和を保ちつつその意欲及び能力に応じて就労する機会が必ずしも十分に確保されていない現状等を踏まえ、組合員が出資し、それぞれの意見を反映して組合の事業が行われ、及び組合員自らが事業に従事することを基本原理とする組織に関し、設立、管理その他必要な事項を定めること等により、多様な就労の機会を創出することを促進するとともに、当該組織を通じて地域における多様な需要に応じた事業が行われることを促進し、もって持続可能で活力ある地域社会の実現に資することを目的とする。
つまり、労働者協同組合は、組合員(働く人)が出資し、自らの意見を反映して事業が運営され、事業に従事する組織です。
働く人が自ら出資して、運営にも携わる「協同労働」という新しい働き方を実現することになります。

(2)労働者協同組合の基本原理

労働者協同組合の基本原理は、次の3点です。
①組合員が出資すること
②事業を行なう際に組合員の意見が適切に反映されること
③組合員が組合の事業に従事すること
一般的な株式会社の場合、社員は会社の指揮命令に基づいて労務を提供しますが、経営には関与しません。
また、出資者は株主であり、会社は株主に対する配当を重視します。
これに対して、労働者協同組合は、働く人が自ら出資して組合をつくり、働く人の意見を運営に反映させます。配当については、「剰余金の配当は、組合員が組合の事業に従事した程度に応じて行なうこと」とされています。
また、これらの前提として、組合と組合員が労働契約を結ぶことや、組合員の出資口数にかかわらず議決権や選挙権を平等とすることなども定めています。

(3)労働者協同組合のメリット・デメリット

これまで、労働者協同組合のような組織形態はありませんでした。類似の組織として企業組合やNPO法人がありますが、設立時に所管官庁の認証が必要だったり、活動できる分野が限られていたりと、いろいろと制限があります。
労働者協同組合は、そうした制約を受けることなく、簡便な手続きで設立や運営を行なうことが可能になっています。
一方で、全組合員が労働・運営に携わることから意思決定に時間や手間がかかることや、労働者のやりがいに便乗した低賃金労働・労働条件の悪化なども懸念されています。

(4)労働者協同組合の設立状況

2024年4月1日時点で、東京都、北海道、大阪府、京都府のほか、埼玉県、千葉県など27県において、87法人が設立されています。
現状では、設立数は多いとはいえませんが、多様な働き方を実現しつつ、地域の課題に取り組むための選択肢の一つであり、各地域でさまざまな事業を展開することが期待されています。

参考

労働者協同組合の設立状況(概要)(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001233086.pdf