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人が目指すべき「時間の使い方」のゴールとは?

2018年6月29日更新

人が目指すべき「時間の使い方」のゴールとは?

「クラウド会計ソフト freee」を3か月で生んだ創業者に聞く

PICK UP書籍:「3か月」の使い方で人生は変わる

「限られた時間」の有効な使い方を語る佐々木さん

1つは「思い悩まない」こと。こうだと思ったらとにかくやってみる。もし途中で間違いを発見し方向転換の必要性を感じたらすぐに対応する。思い悩みながら物事を進めていくのはとても難しいし、そこに陥ってしまうと動けなくなってしまいます。「これでよかったのかな」と、考えているうちに時間がどんどん過ぎてしまう。これはすごくもったいないことです。

たまに、悩みつつ全力で取り組めるという超人的な人もいますが、普通の人には無理です(笑)。私たちがやるべきことはしっかりと「考えるモード」と「やり抜くモード」を意識して切り替えることです。


――そうはいっても、ついつい「これでいいかな……」と思い悩んでしまいます。切り替えるための具体的な方法はありますか?

たとえば、グーグルでは「OKR(Objectives and Key Results)」という目標管理指標を使っていました。目的(Objectives)を設定し、進捗や達成度を定量的に判断できる結果指標(Key Result)をおき、その達成を目指してものごとを進めていくものです。このOKRには、「考えること」と「行動すること」を分けるという意味もあるんです。考えて目標を立てたら、とにかくいったんやり抜こうよ、という。もちろん軌道修正が必要なら臨機応変にしなければいけませんが、大まかには決めて、決めたら走ろうよということを繰り返していました。それはfreeeでも同じです。


――「目標を決めて、3か月間走ろう」ということですね。freeeでのプロジェクトには多くの成功事例があると思いますが、とくに印象的な「3か月」の事例はありますか?

freeeのなかでも大きなヒットになったのが「会社設立 freee」というソフトです。会社設立って日本では、いっぱい書類を作らなくちゃいけないからとても大変なんですね。これらの書類を簡単に、かつ短時間でつくれるツールがあればfreeeとしては意味があるんじゃないかと、開発を考えていました。

ただこれは、本当に意味があるのかわからない実験的なプロジェクトでした。だらだらやっても意味がないから、3か月で結果を出そう、それができるんならやろう、ということでGOサインを出した。それから人をアサインして数人の小さなチームを組み、1人が企画して細かいスケジュールを組んで、とにかく3か月間は全力で走り切ってみようとスタートしました。

結果的には、短期間でほんとうにクオリティの高い製品がつくれました。ユーザーのみなさんにもすごく満足してもらうことができた。また、みんな全力で3か月間走り切ったので、チームの雰囲気もすごくよかったんですよね。

このときのチームに迷いはありませんでした。「どうしようか」というのがなく、「もういいんです。これでいくんです」みたいな(笑)。プロジェクトの回し方としては理想的で、関わった人たちにも大きな学びになりました。そして、「こんなに早く、こんなに大きなインパクトをユーザーに与えることができるんだ」ということがわかって、社内においても大きな意味のある事例になった。


――なるほど。やはり迷いがないということは大きなエネルギーになるんですね!

つけ加えると、ついつい考え込んで立ち止まってしまったときのために、「指摘してくれる人、相談にのってくれる人」を身近につくっておくといいですね。「こういうことをやりたいんだけど、○○が壁になって行動に移せない」というとき、「それって、本当に問題なのかな?」と指摘してもらえる。そうすると「あれ? もしかしたら他の方法があるかも」と気づけたりします。率直なフィードバックをくれる相手がいることは、とても大切です。

他には、周りの人に「○○をいつまでに実行する」と、宣言してもいいですね。明示的に約束することで実現に向けた意気込みは確実に変わります。結局、「いつかやれたらいいな」はいつまでたっても実現しないものです。そういう意味で、プロジェクトを進める最中で、ミッションの意義なども折に触れメンバーと言葉にして確認することも大切ですね。

行動が中途半端なら、結果も中途半端になる

――「思い悩まない」以外に、時間を有効に使うために意識した方がいいことはありますか?

実際に動き出した「過程を楽しめる」というのもポイントの1つです。たとえば趣味や仕事など、夢中になって取り組んでいるとき、気づけば3日たっていたなんてことがあるはずです。夢中なときは集中力もありますし、後悔のない時間の使い方となります。


――夢中で取り組むって、けっこう熱量がいりそうですね。

もちろん、人には得手・不得手があるので、その部分をしっかりと自己認識して、その対策をとっておくことは必要です。たとえば、自分の苦手な作業は他のメンバーに頼んでみるとか、取り組む作業のペースを守るのが苦手であれば、アラートで時間を区切るようにするだとか。苦手なものは気合で乗り越える! という精神論じゃなくて(笑)。夢中で取り組むための仕組みを準備しておくことは大切です。

ときには、「行動」を振り返る時間を取ることも必要ですが、まずはやると決めたら、楽しみながら「行動」する。不安を感じながらだと行動も中途半端になるので。結果につながらないことが多くなります。


――夢中でやっていても結果的にうまくいかないこともあると思うのですが、対処法は?

もし結果として失敗に終わってしまったとしても、夢中で取り組んだならば「あのとき、きちんと行動しなかった」という状況を避けることができます。

成果を出している人というのは、意外とたくさんの失敗をしているものです。しかし彼らは、その失敗も必ず次への糧にします。「3か月」きちんと行動した結果うまくいかなかったのなら、そもそもの方針が間違っていたことがわかります。そして次回はそれを踏まえて新たな「3か月」をスタートする。それができれば、僕は成功だと思っています。

やりたいことを見つけて、「思い悩まず」「夢中」でゴールへ向かう。その結果で得た学びを活かして、次の「3か月」をスタートさせる。そうすれば結果的に、短時間でやりたいことを実現できると思います。


――時間の使い方がうまくいかない……、と悩んでいる方にメッセージをいただけますか?

みなさん実感されていると思いますが、時間は貴重な資産です。その貴重な時間を使ってどう生きるか、限られた時間とどううまく付き合っていくか。今回書いた本『「3か月」の使い方で人生は変わる』は、そういったことを知りたい方のお役に立てる本かなと思っています。

また、「やりたいことがわからない」と漠然とした不安を抱えている人にも読んでもらいたいなと思います。新しく行動できることは、実は身近にたくさんあります。こんな時間の使い方もあったんだという、みなさんの「最初の一歩」に貢献できたら、嬉しいです。

日本の社会人はこれまで、「外向的であること」を過度に期待されてきた気がするんです。他者との関係を重視して、目の前のお客さんや上司、同僚などからの要求にはとにかく最優先で応じる、というような。それができてはじめて他者から承認されるんだよ、というカルチャーがある。

でも本来は他者との関係性などよりも、自分のやりたいこととかミッションが仕事の中心になるべきで、その実現のためには極度に外向的であったり内向的であってりしてはいけない。もっとバランスのいい働き方や時間の使い方があるはずです。そんな仕事を、みんなができるような世の中になればいいと思うし、自分としてもそういう流れを推進していきたいですね。

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佐々木 大輔(ささき だいすけ)

freee(フリー) 創業者・代表取締役CEO。1980年東京生まれ。一橋大学商学部卒。卒業後は、株式会社博報堂でマーケティングプランナーとしてクライアントへのマーケティング戦略の立案に従事する。その後、未公開株式投資ファーム・CLSAキャピタルパートナーズでの投資アナリストを経て、株式会社ALBERTの執行役員CFOに就任。2008年に Google に参画。日本におけるマーケティング戦略立案、Google マップのパートナーシップ開発や、日本およびアジア・パシフィック地域における中小企業向けのマーケティングの統括などを担当。中小企業セグメントにおけるアジアでのGoogleのビジネスおよび組織の拡大を推進した。

2012年7月、freee 株式会社を創業し、シェアNo.1クラウド会計ソフト「freee」等を提供している。日経ビジネス 「2013年日本のイノベーター30人」「2014年日本の主役100人」、Forbes JAPAN「日本の起業家ランキング」BEST 10に2015年、2016年選出。
 

2018/6/28発行
四六判/並製

「3か月」の使い方で人生は変わる

Googleでのプロジェクトを成功させ、さらにシェアNo.1クラウド会計ソフトfreeeを開発した「3か月ルール」とは? 「やらなければならないこと」に追われる毎日から抜け出し、「本当にやりたいこと」を実現するための時間の使い方を紹介する。
著者:佐々木大輔
価格:1,620円(税込)
ISBN:4-534-05598-9
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