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新型コロナ感染拡大に伴い、徐々に導入されていったテレワークですが、慣れとともに「なんとなく目の前の業務をこなす」ことがルーティン化してきた人もいるのではないでしょうか?
職場のメンバー一人ひとりが「やるべき業務」を意識するにはどうすればいいのか、上司はどのように部下へ仕事を割り振っていくべきなのか――今回は
『リーダーシップがなくてもできる「職場の問題」30の解決法』の著者であり、コンサルタントとして1200名以上に職場の問題をヒアリングしてきた大橋高広氏にテレワークの業務改善法を聞いてみました。
※本稿は『リーダーシップがなくてもできる「職場の問題」30の解決法』の一部を再編集しています
不安な理由は「成果イメージを共有できない」から
最近、新型コロナウイルスの影響などにより、テレワークの導入が進んでいます。特に、事前準備をすることなくテレワークの体制に入っていった職場においては、メンバー一人ひとりの担当業務やその成果イメージを具体的に共有できていないケースがあります。
テレワークでは、部下は基本的にメンバーと顔を合わせることなく、一人で仕事を進めていくことになるため、「やるべき業務」とその「成果イメージ」がわかりにくいと、部下に不安が生じてしまいます。特に、事務系職種では注意が必要です。
要するに、誰がどの仕事をすれば良いのかが不明瞭で、かつ成果イメージについても共有されていないので、自宅で一人になって仕事に向かうと、迷いが生じて不安にかられてしまうのです。
上司としてやるべきことは、それぞれの部下に対してしっかり仕事を割り当てていくことであり、成果のイメージを具体的に共有しておくことです。その2つが確認でき、部下が上司のマネジメントを信頼していれば、上司が勤務時間中にいちいち監視しなくても、部下は成果を出してくれるはずです。
また、リアルな職場と同じタイムスケジュールを意識するために、「朝礼」「昼休憩」「終礼」のタイミングで、上司からチーム全員にチャットやビデオ会議ツールなどで声をかけるのもおすすめです。
従来から、職場で朝礼を行ったり、工場で朝一番にラジオ体操に取り組んだりする光景が見られました。こうした機会は、仕事モードに入るきっかけとなるだけでなく、職場のメンバー全員で目標を共有したり、お互いに様子を確認したりする上で、一定の意味がありました。
特に、テレワークの場合は、メンバーの様子を常時確認することができません。そのため、職場のメンバーに見られていないことでサボりがちになってしまう人もいれば、逆に周囲の目が気にならないため際限なく仕事を続けてしまい、残業が常態化してしまう人もいます。
最近では、テレワークでの働き過ぎによる体調悪化の事例も報告されています。
かといって、テレワーク中の部下の行動を撮影したりするような過度な監視ツールを用いれば心理的安全性を損ないます。そこで、時間の区切りには号令をかけることが望ましいといえます。私がコンサルティングを通じて確認している範囲では、テレワークでも生産性の高い働き方をしている職場では、こうしたフォローをきめ細かく行っている傾向があります。
テレワークでも「1on1ミーティング」を実践しよう
テレワークで働くことになったとしても、ぜひ取り組んでいただきたいのが、上司と部下が1対1で行う
1on1ミーティングです。
部下によって成長のスピードや現在のスキル、業務の理解度などはバラバラです。だからこそ、個別の状況を把握した上で育成をしていくためには、テレワークの状況でも個別に面談を行うのがベストです。
1回数分程度でかまわないので、「朝礼が終わった後」「終礼をする前」のタイミングなどで、個別にビデオ会議ツールで面談を行いましょう。朝は、その日1日の目標を確認し、夕方にはその日の成果を確認した上で、明日の目標設定のフォローを行います。
残業の申請は、たとえば「15時まで」のように期限を決めて、チャットやオンライン会議ツールなどで行えるようにすると良いでしょう。
今、テレワークをしている各職場では、残業申請をどのような基準で認めるべきかが問題となっています。部下の勤務状況が見えにくいことによって、不要と思われる残業が認められる、あるいは逆に必要な残業申請が認められずサービス残業が常態化しているという状況もあります。
しかし、上司と部下が毎日定期的に面談を行っていれば、仕事の進捗状況も把握できているので、適正な残業が認められるようにもなります。残業時間をめぐってのトラブルも回避できるはずです。
リアルとは異なり、テレワークの場合はオンライン会議ツールによる簡潔な面談が実施可能です。直接顔を合わせることがない分、しっかりと連絡を取り合うことを意識してください。
POINT
テレワークで部下に仕事を任せるときに大切なのは、「やるべき業務」と「その成果イメージ」を明確にし、認識を共有すること。
また、テレワークになったら、もはや連絡は最小限で構わないと考えがちではあるが、それでは、目指すべき成果や業務の進捗感などに、上司と部下で差が生まれてしまう可能性がある。そういったことを防ぐためにも、オフライン時以上に、しっかりとコミュニケーションをとることを心がける。
株式会社NCコンサルティング代表取締役社長。1982年生まれ。大阪府出身。人事評価制度、管理職育成、職場改善の専門家。大阪商工会議所人事労務サポート推進パートナー、八尾市や守口市、門真市、和泉市などの商工会議所専門相談員。同志社大学を卒業後、大手通信系企業にて歓楽街での飛び込み営業を経て、経済団体に入職し中小企業の経営支援に従事する。その際、橋下徹氏による府政改革を経験。その後、中堅製造業で総務経理を担当する傍ら、父から息子への事業承継を推進。2015年、株式会社NCコンサルティングを設立。開業から約5年間で70社以上のクライアント企業のスタッフへ直接面談を実施。ヒアリングしたスタッフの総数は1,200名を超える職場の問題に精通した人事のプロ。「中小企業が元気になれば、日本が元気になる」を信条に、コンサルティング・研修・セミナー・講演を全国各地で行なっている。