PICK UP書籍:新版 総務担当者のための産休・育休の実務がわかる本
その発言、マタハラです!
厚生労働省(2020年調査)によれば、女性の育児休業取得率は8割を超えたものの、第1子の妊娠で退職する人は少なくありません。出産・育児をする従業員が育休を取り仕事に復帰して働き続けるためには、それぞれの実情を鑑み、適切な支援をしていくことが会社には求められています。労働基準法による母性保護
女性が妊娠し、出産することは心身ともに大きな変化を伴います。また、出産するまでの母体および胎児を含む子どもの保護、出産後の母体の保護が必要になります。そのため、労働基準法では、次表のような母性保護の規定を設けています。労働基準法による母性保護の内容
項目 | 概要 |
産前産後休業 | 原則として出産前6週間(※)、出産後8週間女性従業員に与える休暇 ※多胎妊娠の場合は14週間 |
軽易な業務への転換 | 妊娠中の女性従業員の軽易な業務への転換 |
妊産婦等の危険有害業務の就業制限 | 妊産婦等の妊娠、出産、哺育等に有害な業務への就業の禁止 |
妊産婦に対する変形労働時間制の適用制限 | 妊産婦の変形労働時間制の適用禁止、法定労働時間を超える労働の禁止 |
妊産婦の時間外労働、休日労働、深夜業の制限 | 妊産婦の時間外労働、休日労働または深夜労働の禁止 |
育児時間 | 1歳未満の子どもを育てる女性従業員に与える、1日2回各30分以上の育児をする時間 |
◆産前産後休業(産前産後休暇)
労働基準法では、産前休業として出産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)の女性従業員が請求したとき、および、産後休業として出産後8週間の女性従業員は働かせることができないと規定しています。これらをあわせて「産前産後休業」と呼んでいます。◆軽度な業務への転換
妊娠中の従業員が、担当している業務が負担であるため業務の変更を希望(請求)したときには、他の軽易な業務に転換させなければなりません。◆妊産婦等の危険有害業務の就業制限
労働基準法では、妊娠中の従業員または出産後1年以内の従業員のことを「妊産婦」といい、妊娠、出産、哺育(ほいく)等に有害な業務に就かせてはいけないとしています。妊産婦等の就業制限の業務の範囲
×…女性を就かせてはならない業務
△…女性が申し出た場合就かせてはならない業務
○…女性を就かせても差し支えない業務
女性労働基準規則第2条第1項 | 就業制限の内容 | |||
妊婦 | 産婦 | その他の女性 | ||
1号 | 一定の重量物を取り扱う業務 | × | × | × |
2号 | ボイラーの取扱いの業務 | × | △ | ○ |
3号 | ボイラーの溶接の業務 | × | △ | ○ |
4号 | つり上げ荷重が5トン以上のクレーン、デリックまたは制限荷重が5トン以上の揚貨装置の運転の業務 | × | △ | ○ |
5号 | 運転中の原動機または原動機から中間軸までの動力伝動装置の掃除、給油、検査、修理またはベルトの掛換えの業務 | × | △ | ○ |
6号 | クレーン、デリックまたは揚貨装置の玉掛けの業務(2人以上の者によって行う玉掛けの業務における補助作業の業務を除く) | × | △ | ○ |
7号 | 動力により駆動させる土木建築用機械または船舶荷扱用機械の運転の業務 | × | △ | ○ |
8号 | 直径が25センチメートル以上の丸のこ盤(横切用丸のこ盤および自動送り装置を有する丸のこ盤を除く。)またはのこ車の直径が75センチメートル以上の帯のこ盤(自動送り装置を有する帯のこ盤を除く)に木材を送給する業務 | × | △ | ○ |
9号 | 操車場の構内における軌道車両の入換え、連結または解放の業務 | × | △ | ○ |
10号 | 蒸気または圧縮空気により駆動されるプレス機械または鍛造機械を用いて行う金属加工の業務 | × | △ | ○ |
11号 | 動力により駆動されるプレス機械、シャー等を用いて行う厚さ8ミリメートル以上の鋼板加工の業務 | × | △ | ○ |
12号 | 岩石または鉱物の破砕機または粉砕機に材料を送給する業務 | × | △ | ○ |
13号 | 土砂が崩壊するおそれのある場所または深さが5メートル以上の地穴における業務 | × | ○ | ○ |
14号 | 高さが5メートル以上の場所で、墜落により労働者が危害を受けるおそれのあるところにおける業務 | × | ○ | ○ |
15号 | 足場の組立て、解体または変更の業務(地上または床上における補助作業の業務を除く) | × | △ | ○ |
16号 | 胸高直径が35センチメートル以上の立木の伐採の業務 | × | △ | ○ |
17号 | 機械集材装置、運材索道等を用いて行う木材の搬出の業務 | × | △ | ○ |
18号 | 一定の有害物を発散する場所において行われる業務 | × | × | × |
19号 | 多量の高熱物体を取り扱う業務 | × | △ | ○ |
20号 | 著しく暑熱な場所における業務 | × | △ | ○ |
21号 | 多量の低温物体を取り扱う業務 | × | △ | ○ |
22号 | 著しく寒冷な場所における業務 | × | △ | ○ |
23号 | 異常気圧下における業務 | × | △ | ○ |
24号 | さく岩機、鋲打機等身体に著しい振動を与える機械器具を用いて行う業務 | × | × | ○ |
◆妊産婦に対する変形労働時間制の適用制限
労働基準法で規定する法定労働時間は、原則として1日8時間、1週40時間ですが、労働時間を柔軟に設定できるように、変形労働時間制を導入する会社があります。◆妊産婦の時間外労働、休日労働、深夜業の制限
労働基準法では法定労働時間が決まっているものの、会社は時間外・休日労働に関する協定(36協定)を締結し届け出る等、適切な手続きを行うことで従業員を、法定労働時間を超えてまたは法定休日に働かせることができます。◆育児時間
出産後、子どもを母乳で育てる女性は多く、一定の時間ごとに授乳をする時間が必要になります。労働基準法では、満1歳に達しない子どもを育てる女性従業員が請求したときには、1日に2回、各々少なくとも30分の育児時間を与えることを義務づけています。これは授乳を想定したものです。男女雇用機会均等法による母性健康管理
男女雇用機会均等法では、妊娠中や出産後の女性従業員の健康の確保を図る等の措置の推進が目的の1つとして掲げられています。男女雇用機会均等法による母性健康管理の内容
項目 | 概要 |
妊婦健診の受診時間の確保 | 母子保健法に定められている保健指導または健康診査を受ける時間の確保 |
保健指導・健康診査の指導事項を守るための措置 | 妊婦健診での医師等の指導事項を守れるような必要な措置 |
◆妊婦健診の受診時間の確保
母子保健法では、妊婦や胎児の健康状態を確認するため、医師や助産師(以下、「医師等」という)による身体測定や血液・血圧・尿等の保健指導または健康診査を行うことを規定しています。妊婦健診を受信するために確保しなければならない回数
期間 | 妊娠初期~23週 | 24週~35週 | 36週~出産 |
回数 | 1・2・3・4 | 5・6・7・8・9・10 | 11・12・13・14 |
受診間隔 | 4週に1回 | 2週間に1回 | 1週間に1回 |
◆保健指導・健康診査の指導事項を守るための措置
妊娠中および出産後の女性従業員が妊婦健診を受け、医師等から何らかの指導を受けたときは、その従業員が受けた指導を守ることができるようにするため、会社は下表のような時差通勤や勤務時間の短縮等の必要な措置を講じる必要があります。医師等からの指導事項を守ることができるようにするための措置
項目 | 具体的内容 |
妊娠中の通勤緩和 | 時差通勤、勤務時間の短縮等の措置 |
妊娠中の休憩に関する措置 | 休憩時間の延長、休憩回数の増加等の措置 |
妊娠中または出産後の症状等に対応する措置 | 作業の制限、勤務時間の短縮、休業等 |
新版 総務担当者のための産休・育休の実務がわかる本