あなたは「4P」「3C分析」「STP」などをビジネスで使えているでしょうか?
・そもそも何をすればいいのかわからない
・市場調査をしても十分に活かしきれない
・販促をしても、売上が上がらない
・いくらマーケティングを学んでも、実際のビジネスではどうしたらいいかわからない
これは30年以上、数々の企業のマーケティングやブランドマネジメントに携わってきた
『マーケティングを学んだけれど、どう使えばいいかわからない人へ』の著者・西口一希氏が、ビジネスの現場でよく耳にする声です。著者自身も、若い頃にはこうした思いを抱えていたそう。
そこで、P&G、ロート製薬、ロクシタン、スマートニュースをはじめ、多くの企業で実績を出してきた著者が、マーケティングがビジネスで使えるようになるためのポイントをご紹介します。
「マーケティングの樹海」に迷い込んだ旅人
それまで学んできたマーケティングの方法論や手法をもとに新しいブランドを新発売したものの、売上が頭打ちに。当時は、まるでゴールへの道も見えない暗闇をさまよっているような焦燥感と不安を抱いていたものでした。
その後、自分自身の試行錯誤の経験や先輩方のアドバイスをもとに、「お客さまを起点としたマーケティング(顧客起点マーケティング)」にたどり着いたことで、私のマーケターとしてのキャリアは現在に至ります。
P&G、ロート製薬でのマーケティングやブランドマネジメントの業務ののち、ロクシタン ジャポンで代表取締役、当時スタートアップ企業であったスマートニュースでは日本とアメリカのマーケティング担当執行役員を務め、多岐に渡る商品やサービスに携わってきました。
現在は、経営コンサルティングと投資業務を行うStrategy Partnersを創立し、さまざまな企業への経営支援を行いながら、企業経営者や事業責任者へのサポートをさせていただいております。
そのなかで実感しているのは、マーケティングの現場では手探りでさまよい続け、同じところで悩んでいる人がたくさんいるということです。
事業を成長させるために、さまざまなマーケティングの理論やテクノロジーを勉強し、さまざまな施策を試みても思ったような成果が出ず、労力や時間だけを消費して疲弊していく…。そんな姿はさながら「樹海」に迷い込んだ旅人のようです。
マーケティングを「学ぶ」のと「できる」の間にある大きな壁
「マーケティング」というと、一見スマートできらびやかな世界というイメージを持つかもしれませんが、実際に足を踏み入れればそのイメージは変わります。
その実情は、まるで鬱蒼と樹々が広がり続ける樹海です。この世界では常に新しい手法やテクノロジーが生まれ続けており、「○○マーケティング」や「○○戦略」「○○理論」など、さまざまな手法があふれかえっています。マーケティングを学ぶ際も、そうしたものばかりに目がいきがちです。
さらにビジネスをめぐる環境は、刻々と変化し続けています。そのため、マーケティングの世界にあふれるツールや方法論は、からみ合って樹木や雑草となり、その先の道筋を見えなくしています。
周到な用意をしないまま一度そこに足を踏み入れれば、出口がどこにあるのか、そもそもゴールが何だったのかもわからなくなり、自分がいる場所さえ見失ってさまよい続けることになってしまうのです。まさに、樹海に迷い込むかのごとくです。
また、マーケティングの世界には専門的な用語もたくさんあります。こうした用語を解説してくれるマーケティングの本やサイトもたくさんあるので、それらを読んで、何とか理解しようとがんばっているマーケティング初心者の方もいるかもしれません。
でも、こうした用語はあいまいな定義のまま増殖し、営業目的で使われていることも多いのです。いかにも専門的で説得力のある言葉のように使われていても、意味や定義があいまいな用語はしょせん「バズワード」にすぎません。
ですから、せっかく用語を覚えてなんとなく理解した気になっても、「知っている」で止まってしまっている方もたくさんいます。
マーケティングを「学ぶ」のと、実践「できる」の間には、大きな壁があるのです。その壁を越えられず、右往左往する。これが「マーケティングの樹海」をさまよっている状態です。
「マーケティングの樹海を抜けだすためのコンパス」
「マーケティングの樹海」を抜けだすためにもっとも大切なのは、流行りのツールや具体的な理論を覚えるよりも、マーケティングもふくめた「ビジネスの原則」を理解しておくことです。
「ビジネスの原則」と「マーケティング」の関係について構造的に理解し、ビジネスを向上させるためには、お客さまに何が必要なのかを学ぶことがマーケティングの樹海を抜けだし、ビジネスの世界を旅するコンパスとなって道筋を示してくれるのです。
マーケティングでは、売る手段や手法ばかりが注目されるようになり、「どんなお客さまが、どんな気持ちで、どうやってプロダクトにお金を払うのか」という視点が欠けていることが多くあります。「お客さまの洞察」こそが、マーケティングの樹海を抜け出し、使えるようになるために、最初に意識するべきポイントです。
Strategy Partners代表取締役。1990年大阪大学経済学部卒業後、P&Gに入社。ブランドマネージャー、マーケティングディレクターとして「パンパース」「パンテーン」「プリングルズ」「ヴィダルサスーン」などのブランド担当。2006年ロート製薬に入社。執行役員マーケティング本部長として「肌ラボ」「Obagi」「デ・オウ」「ロート目薬」などの60以上のブランドを担当。
2015年ロクシタンジャポン代表取締役。2016年にロクシタングループ過去最高利益達成に貢献し、アジア人初のグローバルエグゼクティブコミッティメンバーに選出、その後ロクシタン社外取締役戦略顧問。2017年にスマートニュースへ日本および米国のマーケティング担当執行役員として参画。累計ダウンロード数5000万、月間使用者数2000万人、企業評価金額が10億ドル(当時のレートで約1000億円)を超えるユニコーン企業となるまでの成長に貢献。2019年株式会社Strategy Partnersの代表取締役として事業戦略・マーケティング戦略のコンサルタント業務および投資活動に従事。戦略調査を軸とするM-Force株式会社を共同創業。
著書に『たった一人の分析から事業は成長する 実践顧客起点マーケティング』(翔泳社)、『マンガでわかる 新しいマーケティング』(池田書店)、『企業の「成長の壁」を突破する改革 顧客起点の経営』(日経BP)、共著書に『アフターコロナのマーケティング戦略』(ダイヤモンド社)がある。